八雲

~ハードボイルド麺ハンター
夜叉上 耕介(やしゃのうえ こうすけ)がゆく~

昨夜の酒が抜け切れぬまま
胃袋が麺を求め 中毒を起こし始めた俺は
ハンドルを池尻へと向けた

だがしかし 到着した店は
ぶ厚く重い鉄のドアがしまってやがる
「畜生やすみだったか。。。」

ふとドアの方に目をやると張り紙に「ドア故障中」の文字が。。。

重い扉をこじ開けると
麺を茹でる蒸気とスープの匂いが交錯して独特の雰囲気をかもしている

上々だ

「おやじ 黒出し特製ワンタン麺だ」と視線で会話をすると
「へい」っと 無言で頷く店主

夕暮れ時の店内には酔いつぶれた近所の風来坊と
部活帰りの4人ほどの学生BGMは短波ラジヲの競馬の実況
学生たちが中身の無い今日の出来事を
お互い報告しあっている

そうこうしているうちに
一人の常連風女が店内に入ってきた

「つかれたわ 一杯作って頂戴」
それだけ伝えると 女は眠りについてしまった

オヤジは全てわかっているような表情で
頷いたのみ

ドンブリはださない
一体なにをわかったというのだ
この女はなにを注文したのだ?

頭の中で様々な憶測を立てるうちに
俺のラーメンが出てきた

ひとまずスープを啜る
黒く澄んだ見た目とは裏腹なしっかりとした旨み
遠く焼津漁港、潮風にあたる干された鰹の情景が目に浮かんだ

「キンっ」と甲高い音を立てて割れた断面を見ると
黒いダイヤのような漆黒の鰹節 その背後には なるほど
さば、スルメ、干しえびだな見事な共演だ

麺はどうだ 中細のゆるいウェイビー麺
するすると吸い込まれてくる麺達は
しっかりスープも口内へ誘ってゆく

腰もある 太さも硬さも良い加減だ
ワンタンは肉ワンタンとエビワンタンの2トップ
肉→エビ→肉・・の順で頬張って行く

肉ワンタンはかんだ瞬間あふれんばかりの肉エキス
エビワンタンは咀嚼を跳ね返すほどの弾力に
豊かな海老の風味

おっともう一人主役がいたぜ
赤い縁のチャーシューだ

こいつをほっておいては
ハードボイルドの名がすたると言うもんだ

少し小ぶりのチャーシューを贅沢に一口で頬張る
「むっ 小ぶりのこの姿からは想像できない
噛めば噛むほど際限なく出てくるこの旨みは何だ」

「畜生 細かく段階に分けて食べるべきだったか」
嬉しい誤算をするも 残りはまだ一枚ある

肉ワンタン→エビワンタン→チャーシュー→肉ワンタン・・・
この至福ループを繰り返すうちに一杯を平らげてしまった

上々だ 

テーブルに勘定を置き後にした
「また来るぜ」とオヤジに視線を送る
「うちはいつでもお待ちしてますぜ」とオヤジ

ふと女に目をやるとこっちをみてにやりと微笑んだ。。。



*ストーリー、店内の状況、ラーメンスープの材料は
完全フィクションです ふざけてます 実際の店舗の
情景とは大分かけ離れています 自分の目でご確認ください

あ~旨かった 二日酔いに優しい ラーメンでした 笑

やっと月曜日が終わる。。。


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